スットン・ローゼス

 きのうに続き千葉県富津市、JR内房線『上総湊』駅周辺で見つけたネタ。

 とある老舗の甘党喫茶で、奇妙な貼り紙を見つけた。

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 「ご用の時はタタいて下さい。店員がスットンで参ります

 スットンで、というところがなんとも昭和半ば期な表現で、かーいらしい。古い店だから、ここだけ時間が止まっているのだろう。

 さらに貼り紙の下には木槌が吊ってある。これで柱をタタくと店員が参るというのだ。ザンギリ頭を、じゃなく、まさかと思ってタタいてみれば、その音を聞きつけて店員が本当にスットンで参った。これには驚いたが、好奇心でタタいてみただけなので特に用事がない。マジで参った。仕方なく団子を注文した

 なるほど、こうやって追加注文を増やしているのかも。考えたな。しかしこんなにガンガン柱をタタかれて、しまいに店が倒れたりしないのだろうか。

 そういえば、知人からこんな話を聞いた。徳島県には日本でもっとも大きな喫茶店がある。店内なんと400坪。だからウエイターも大声で呼ばないと来ない。そしてこちらに気が付いたウエイターは、なんと全力疾走でスットンで来るのだという。そんなスットンキョなお話(吉村智樹)。

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by yoshimuratomoki | 2006-02-27 09:22

オーバー・ザ・マウンテン

 取材で千葉県は富津市に行ってきた。

 いつもは東京や大阪の街角で、重箱の隅をこちょこちょしながらミクロ目線なネタをせこく探しているのだが、さすが眼前に浦賀水道の大海原を望む地、これまでのネタとはスケールが違う! JR内房線『上総湊』駅前を歩いていると、めまいを憶えるような看板に出くわした。

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 『とんかつ・うなぎ・地魚・地酒 山の上の下

 山の上の下……どこやねん! まるでふいに禅問答を突きつけられたかのようだ。よくわからないが、深い。港町でありながら、筆頭メニューが「とんかつなのも含め

 気がついた。山の上の下、これを合体させると「という字になる。寂しい峠を腹すかせながら歩いているとき、そこに温かくてスタミナのつくトンカツや鰻が食べられる店があったら、こんな嬉しいことはないだろう。この店は漢字をわざわざ分解し、道往く者に一幅の絵のような情感を持たせたのだ。なるほどなぁ。

 店に入って主人にその感動を伝えると「いや、そういうわけじゃないんです。単にうちの店が『山の上ホテルの下にあるから」だと。感動して損した! でも、とんかつ旨かった!

 思い過ごしも恋のうち。ついでに言うが、漢字というのは実によくできている。「峠」も山あいの光景をうまく描いてしているし、元旦の「旦」なんか、ちょっとふるえがくるくらい見事。旦は水平線から太陽がのぼっている景色を表しているのだ。言われてみればそう見えるでしょ? 「囮」もスゴイし、「辛」なんて「幸」になる一歩手前なんだぞ。辛さの向こうに幸せがある。漢字って、深い。

 逆に「傘」「弓」「皿」「柵」などはそのまんますぎ

 というわけで、次回も富津市ネタです(吉村智樹)。

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by yoshimuratomoki | 2006-02-26 21:25

ホットスタッフ

 たこ焼きを食べる醍醐味といえば、アツアツをハフハフ、コロコロ転がし、汗をカキカキ食べるところにある。なかには冷めてしんなりしてから食べるほうが美味しいというツウの方もおられるが、それはもうたこ焼き有段者。多くのたこ焼きライトユーザーは、やはりアツアツをハフハフ、コロコロ転がし、汗をカキカキ(以下オミット)こそを望むだろう。たこ焼きとはつまり、舌の上でアツいレイヴを巻き起こすミラーボールなのだ。

 しかし、「これはイキすぎなんじゃないか」と思われる看板に出くわした。高田馬場を歩いていたおりに見つけたこの看板。

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 尋常ならざる発汗量、振り乱された髪、苦悶に歪む表情、切ない紅潮、激しい吐息。この女性の乱れ方はもう、たこ焼きを食べるというより(公式ブログゆえ自粛)である。食べるんじゃなく、食べられてるというか……。

 この店、正確にはたこ焼きではなく「海族やき」。具はたこのみならず、エビやイカなど、さまざまな魚介が使われている。僕は以前から「たこ焼きは、どうしてたこじゃなくちゃいけないんだろう。差別だ」と疑問を抱いていたので、このアイデアは実にナイスだと思った。

 そしてこのアイデアをいただき、将来的にはフランクフルトや豚コマなども入れた「山族やき」をやってみたいとも。海もいいけど、山もけっこうコーフンするよね。なにが?(吉村智樹

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by yoshimuratomoki | 2006-02-24 21:41

ムーンサルト・ニードロップ

 人生とは、すなわち「自分に合う枕さがしの旅」ではないだろうか。

 いきなり大袈裟だが、人の一生は三分の一が睡眠時間だ。自分に合う枕を見つけることは、人生の重要課題なのである。

 だから人は、自分の頭にジャストマッチする枕さがしに血道をあげる。実際「枕が変わると眠れない」「枕が合わなくて肩こりが酷い」という方は多いのではないだろうか。

 枕の内容物も多種多様だ。蕎麦殻、テンピュール、パルプ、マルコビーンズ、備長炭、緑豆、ハーブ入りなどなど。
 内容物だけではなく、高さ調節機能があったり、最近では「マイナスイオンが出る枕」「頭を置くとモーツアルトが流れる枕」なんてのもある。
 自分は一時期、電気で後頭部を冷却する枕を使っていた。ただ電化製品の上に頭を置いて寝るという状況が、なんだか冷蔵庫に頭を突っ込んでる気がして落ち着かなく、3日でやめてしまったが。

 しかし、すべての枕のなかで、もっとも心地よいのは「ひざまくら」に違いない。
 たらちねの母(枕詞)のひざまくら、愛する彼女のひざまくら(経験なし)、憧れのお姉さんのひざまくら(さらに経験なし!)。ついでに耳そうじなんてしてくれた日にゃ、とろけるような甘い眠りにいざなわれるはず。

 ただ、ひざまくらの欠点は、枕サイドがしまいに苦痛を感じるところだ。本気で寝込まれたら、痺れも切らすしトイレにも行けない。

 そんな欠点を一挙解消した極上の枕が、東京メトロ丸ノ内線『南阿佐ケ谷』駅近くの雑貨屋で売られていた。

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 『ひざまくら

 文字通り、膝の形の枕だ。
 脚が折りたたみになっているので、頭に合うよう高さを調節できる。なにより優れているポイントは、ミニスカートつきだということ。うっひょー! 素晴らしひ! これで独身男性の夜はパラダイスになること保障付き。もしかして、よけいに眠れなくなるカモよ殿方。

 ……でも、なんだか哀しくなってきたのは、なぜだろう。この胸に去来するエレジー感は、なに。これを使って寝ているのを見られたら、全米が泣きそうだ。そう思うのはどうやら僕だけではないようで、値下げされていた吉村智樹

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by yoshimuratomoki | 2006-02-23 13:01

おタッキー&翼

 先日、初めて秋葉原名物のメイド喫茶におじゃ魔女してきた。

 店内は淡いピンク色で統一され、意外と落ち着いたムード。もっとからふるで、きゃぴきゃぴした感じなのかと思ってた。

 それでなのか、女性客が多い。メイド喫茶っていかにもヲタクブームから派生したものと思われがちだけど、女性客にとっては「サービスの行き届いた、かわいいカフェ」って捉え方なのかもな。煙草の煙がもうもうとし、スポーツ新聞満載の駅前喫茶よりずっと入りやすいのだろう。実際、ケーキもちゃんと美味しかった。

 だったら秋葉原だけの文化にしておくのはもったいない。代官山や自由が丘、ニコタマ辺りに開店したら、けっこう当たるんじゃないかと思ったにゃん♪

 とはいえ男子客は、やはり濃い。カウンター席は、いかにもアキバ系の煮しめのような男子がズラリ陣取り、メイドさんにしきりに話しかけたり、ひとり黙々とパソコンになにか打ち込んでいたり。そこだけ別世界、そこだけ正調アキハバラ。

 こんなにカウンター席に濃密な需要があるなら、メイド喫茶より「メイド寿司」のほうが流行るんじゃないだろうか。ネコ耳じゃなくイカ耳つけて。握ったはしから「ぁ~ん(はぁと)」してもらって。

 てなこと考えながら店の外に出ると、一軒の寿司屋があった。重厚な店構え、古風なムード。秋葉原より築地や銀座が似合う感じの(というか、秋葉原では浮いてる感じの)。

「おお、アキバにも、こんな風情の薫る店があったんだ」と感心していると、嗚呼やっぱり! ヲタクの聖地だけのことはある。店外に貼られたメニューは、

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 およそ寿司とは似つかわしくない萌え系キャラが。自分は腐女子はけっこう好きなタイプなんだが、さすがに腐寿司はなぁ。さらに、よく見ると、

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 「アキバ系なら一度は食べてみよう オタク丼

 なんだオタク丼って……。魔法先生ネギとろ丼? カードキャプターさくら鯛丼?

 さらに下を見ると、

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 オタク丼の写真が。横たわった大きなアナゴ、マグロの赤身、そして大量のたまご焼き。つまり海鮮丼だった。フィン・フィッシュ丼。甘いたまご焼きがやけに多いのが、どことなくオタク、なんだろう。

 しかし、お値段がチトお高くないか? いやもしかしたらこれ、海鮮丼の精巧なフィギュアなのかもしれない吉村智樹

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by yoshimuratomoki | 2006-02-22 22:15

ブッダ・ブランド

 当連載189回目にして、初の奈良県ネタです。2月5日(日)、奈良に行ってきました。

 奈良に行った目的はふたつ。ひとつは3月にオープンする新しいサイトがうまくいくよう大仏様にお願いすること。もうひとつは、とあるお菓子を手に入れること

 そのお菓子の名は『大仏さまの鼻くそ』。

 文字通り、大仏さまの鼻くそに見立てた黒糖菓子。東大寺がカンカンに怒って商標登録を取り下げさせたというイワクツキのブツだ。テレビ番組のニュースでもやっていたので、ご存知の方も多いだろう。そんな騒ぎがあったゆえ、「もう売ってないのかな。もし売れ残りを見つけたら絶対GETしよう」と思っていたのだ。

 ところが、OH! マイ・ブッダ

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 こちらの懸念などどこへやら、どこの土産物屋でもフツーに売っているではないか。商魂逞しいというか。

 大きさは、こんな感じ。

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 大仏の鼻くそにしては小さい気もするが、実物大だとボールングの玉くらいになってしまい、持ち帰れないだろう

 この大仏さんの鼻くそ、とにかく硬い。説明書きにも「金槌で叩いてください」と書かれている。冬の寒さが厳しい奈良のこと、空気が乾燥して鼻くそもカピカピになってしまうようだ。

 で、実際に叩き割ってみました。

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 中からコンペイトウが。これは羅髪(らぱつ:大仏さんの頭のパンチな部分)を模したものらしく、それぞれに食べると合格祈願、恋愛成就、身体健康、家内安全、商売繁盛、交通安全のご利益があるという。ところが、一個見当たらない。叩き割った拍子に、ひとつどこかに飛んでいってしまった。どれだろ。たぶん恋愛成就なんだろうな……。

 それにしても、この日の奈良は日曜日にも関わらず閑散としていた。そらそうだ。シーズンオフ真っ盛りだもの。東大寺が盛り上がりを見せるのは、なんといっても2月14日。バレンタインデー? いやいや、お水取りだ。お水取りとともに、春が訪れる。そんな行事と無関係な日に行った自分は、やっぱり今年もLOVEな春は訪れないのかな、と鼻くそほじりながら考えています(吉村智樹)。

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by yoshimuratomoki | 2006-02-12 19:43

本当にあったヤワイ話

 普段、口にしている言葉のなかには「なにもそこまで略さなくても」と思ってしまうものがたくさんある。

 たとえば最近よく耳にするのが「難しい」を略した「むずい」。あと「うっとうしい」を略した「うっとい」。なにもそこまでショートカットしなくても。難しいと言うことが、そんなに難しいのか。うっとうしいと言うことが、そんなにうっとうしいのか。思わず、むななる(胸ぐら掴んで問いただしたくなる、の略)。

 しかしこれらはあくまで口語であり、書き言葉ではないから、まだいい。実際に試験やレポート、パブリックな書面にそう書いてしまう人は、まずいないだろう。

 いや、いた。いたのだ。

 これは阪神西大阪線・阪神本線『尼崎』駅前の中華料理屋で見つけたメニュー。

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 『焼きそば(カタイ)』
 『焼きそば(ヤワイ)』

 ヤワイって! 確かに柔らかいことをヤワイとはよく言うけど。そこまで表現をヤワくせんでも。

 メニューにまで柔らかいをヤワイと縮めるのは、なぜなのか考えた。どうやらこの店のポリシーらしい。それを表明するメニューが、ふたつ隣にあった吉村智樹)。

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by yoshimuratomoki | 2006-02-11 20:07

ババ・スパークス

 以前このブログのコメント欄に、読者のネギ山さんが「川西市に『くそばばハウス』という店がありますよ」と投稿してくださった。さらにご丁寧に地図を添付したメールを送ってくださった。

 そこまで読者によくしていただいて探しに行かなきゃ、おいどんの「街がいさがし魂」がすたるってもんたい!(何弁?)。というわけで先週2月3日(金)の夜、阪急宝塚本線・能勢電鉄妙見線『川西能勢口』駅まで行ってまいりました。

 初めて降りる川西能勢口の駅周辺は、関西人の憧れ宝塚線ならではのハイソなムードに包まれている。わずかに駅前商店街があるものの、高級住宅街は徒歩圏内。こんなexclusiveな街に、本当に「くそばばの家なんてあるんだろうか。おしとやかマダムハウスの間違いでは。

 プリントアウトした地図を頼りに線路沿いを歩いていくと、ビルの片隅に(ほんとに見事に片隅に)、「あった!」。件の看板が出ていた。

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 残念ながら、店は閉まっていた。定休日なのか。はたまた改心したのか。くそばばの正体は無念にも掴めなかった。

 とはいえ無事、看板を採集できました。ネギ山さん、ありがとう!

 しかし凄いな。パート2ということは、パート1があるのか

 ところで、この日の冷え込みのキツさたるや、もう。氷雨まじりの雪が降ってきて、指がかじかんでなかなかシャッターが切れなかった。くそばばは居なかったけれど、くそ寒かったです吉村智樹
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by yoshimuratomoki | 2006-02-10 17:57

ヒゲとボイン

 世の中には「自分は病院になど行ったことがない。国民健康保険料は国に寄付しているようなものだ」と豪語なさる方がいる。

 しかし、どんなに健康な人でも、まず一度はお世話になっている病院がある。それは産婦人科。お産婆さんにとりあげられた人は別として、ほとんどの人が産婦人科が初クリニック体験のはず。

 僕には子供がいないので、自分が産まれたっきり、とんと産婦人科にはご縁がない。だから街を歩いていても、産婦人科の看板をスルーしてしまう。しかし阪神本線『御影』駅前にあったこの看板だけは、思わず内視鏡で凝視したくなるほど見入ってしまった。

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 『ひげ産婦人科

 院長がひげをこんもりたくわえているのだろうか。いや、ま、まさか助産婦さんが……。しりあがり寿の漫画みたいに。それとも黒澤映画の名作『赤ひげ』のように、お値段をお安~くしてくれるとか?

 とはいえ、ひげと出産は、あながち無関係とは言い切れない。
 たとえばカブトムシのオスは、メスが分泌するフェロモンに誘われて、求愛→交接する。その際、フェロモンを出しているのがどのメスなのかを探り当てる役目を果たすのが、ひげ。オスは口ひげでメスの背中をやさしく撫で、そして確認ののち後ろから覆いかぶさるのだ(カブトムシのひげには、鼻や舌と同じ機能がある)。

 女性のなかには「男の人のひげがジョリジョリするの、好き~」とおっしゃる方がおられるが、ひげ撫でを快く思うのは子孫を残すために備わった動物の本能なのだろう(ちなみに、僕は言われたことはないが)。

 実際は「ひげさん」という方がやってらっしゃる産婦人科なのだろう。が、それはそれでスゴクない?(吉村智樹
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by yoshimuratomoki | 2006-02-08 21:08

カマトット

 僕が中学3年生~高校一年生のとき、男子はほぼ全員といってよいほど松田聖子のファンだった。SEIKOと書かれた親衛隊のハッピを来て学校に来てたやつもいた。それを見て思わず「お前はビッキーズか!」とツッコんだものだ(ウソ。その頃ビッキーズまだいなかった)。

 しかし、うってかわって女子からの評判は最悪だった。「かわいこぶりっこしやがって!」「カマトトぶってんちゃうで」「ウソ泣きすんな」と。これは大阪のいち学校のみの現象ではなく、全国規模の猛バッシュだったと思う。なんせ松田聖子をきっかけに「ブリッコ」という言葉が流行語になったくらいだから。彼女は往時、日本中の女子から憎悪されていた。春やすこ・けいこを筆頭に。

 僕にはそれが不思議でならなかった。ぶりっこ、カマトトという点では、同期のアイドル河合奈保子のほうが、ずっとずっと凄かったはず。なんせ、なにを訊かれても首を傾げていたのだから。鳩か。しかし河合奈保子が特に女子から忌み嫌われることはなかった。とにかく標的は松田聖子だけだったのだ。女子たちは、男子とは比べ物にならない鋭敏な嗅覚で、養殖と天然のブリを見極めていたのだろう。この時期の松田聖子は、常に針のむしろを歩き続ける「裸足の季節」だったといえよう。

 しかし、揺れ戻しというのは凄いもの。いくら同性からのバッシングの嵐が吹き荒れようと、カミソリがトラック満載で送られようと、アイドル(偶像)としての自分を貫く姿勢に、女子たちの批判はしだいに賞賛に変わっていった。いまだにコンサートは女性客でいっぱい。こんなにも永きに渡りアイドルで居続けられた人が、ほかにいるだろうか。なんせ実の娘よりもアイドルなのだから。

 現在、アイドルと呼べるのはグラビアアイドルばかり。一線のアイドル歌手は、数えるほどしかいない。多くが秋葉原の石丸電気辺りを活動の場とする地下アイドルだ。ハロプロ勢がテレビから(ほぼ)消え、プロのサッカー選手になった時点で「アイドル歌手」はいなくなった。「一週間、漫画喫茶で暮らしてた」とか“本音アイドル”も面白いけど、「ブリッコ」「カマトト」こそが基本である。そして、その基本を貫くのが困難な難しい時代だ。

 ……てな、くそどーでもいい話を、夜を徹してしてみたいもんだ。ブランデーでもなめながら。例えば、こんな店で。

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 『ラウンジ カマトト

 これは心斎橋で見つけたラウンジ。「カマトト」とは、幼い子供が、知ってるくせに「カマボコはトト(魚)でできてるの?」と親に訊き、子供らしさをアピールするさまから生まれた言葉。本来は愛らしさを表す言葉であり、蔑するニュアンスはなかった。

 現在では、なかなか通用しない感覚だ。いまカマトトぶろうと思ったら、「宇宙から来たからわかんない~」と前置きせねばならない(吉村智樹)。
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by yoshimuratomoki | 2006-02-01 17:34