京都スナップ 「ゲリラ」


京都に引っ越して、先ずひるんだのが、このスナックの名前。

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スナック『ゲリラ』。

ゲリラと言えば最近は、突発的な大雨や、郷ひろみが渋谷の交差点で突然「熱い、熱い」といった内容の歌を回転しながらうたいだす場合に用いられるが(それ最近か?)、かつては、それはそれは危険な状態を指すものだった。

昭和の時代、パレスチナゲリラ、アフガニスタンゲリラ、旧国鉄の同時多発ゲリラなど、テレビからゲリラに関するニュースがお茶の間に流れるたびに、家族間に緊張感が走り、晩ごはんを食べる箸が止まった。
いまでこそ左派は平和主義で草食系なイメージがあるが、往時は難しいことばを叫びながらコン棒を振り回して火炎瓶を投げてくるインテリゲンチャ暴力団というイメージが強かった。
コーラの瓶に爆竹を入れて、空き地でゲリラごっこをしたこともあった。
(たかだかなんの思想もない子供がやるナンセンス!な遊びなので、どうかご勘弁いただきたい)。

さて、物騒な名前のこの店、訊けば40年以上の歴史があり、熱を帯びた学生たちが討論する場だったとか。
やっぱり!

オープンしたころのマスターはすでに故人だとのことで推測でしかない、40年前の歴史ということは、ここで言うゲリラとは反戦・反安保を謳うフォークゲリラから名付けたものではないかと思われる。
新宿と梅田で蜂起し、機動隊と衝突するほどの社会現象となったフォークゲリラだが、学生フォークが盛んだった京都も当然その流れにあっただろう。

祇園祭が始まったのが869年なんていう途方もない永久の歴史をたたえる京都。
ゆえに昭和の時代など数時間前のレベルなんだろうが、僕には寺社仏閣の歴史をひもとくより、こういった店名に刻まれた昭和の傷痕を見つける方が楽しかったりする。

なんて昭和のレジスタンスフォーク礼賛みたいなこと言いながら、だったら「自衛隊に入ろう」などを聴けばよいものを、なんとなく坂井真紀の『ゲリラ~Get it up~』なんて聴いてしまうわたしを断罪せよ。
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by yoshimuratomoki | 2012-10-25 16:47

神戸スナップ 「ブ」

鈴蘭台の駅前を歩いていたら、シンプルなネーミングの店があった。

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「たこ焼 たい焼 ブ」。

ただ、「ブ」のみ

ブ……だけ。
「マジカル頭脳パワー!!」の「超瞬間一文字シャウト」かこれは。

情報量がなさすぎてどの角度からもいじりようがなく、荒野にひとり取り残された気分だ。

謂われを訊こうにも定休日。
インターネットを漁っても謎すぎる店名の由来が書かれた記述は見つからなかった。
まるで看板から勝負を挑まれ、いともたやすく不甲斐なく敗れた、そんな心もちに。

とはいえ、実は街歩きの醍醐味はこういった、自分の処理能力をはるかに超えた、でっかいクジラみたいな物件と出会った瞬間にこそある。

一枚も二枚も上手で、歯が立たない、「ブ」だけの店。
あまりのブ頼なブ骨さにブ辱された気持ちになってブ粋にもブ然としつつも、ひとりのブ男の言語感覚を鍛えてくれたこの店に感謝し、ブ運長久とブ事を祈るばかり。

http://www3.to/tomokiymail (吉村智樹事務所)
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by yoshimuratomoki | 2012-10-19 07:16 | 兵庫県

京都スナップ 「知らんけど」

京都スナップその2 「しらんけど」

妻が「バスで北大路方面を走っていたら、車窓から変な名前のお店が見えたよ」と言う。

「変な名前? なんていう店?」と訊くと、「いや……しらんけど」。

知らんのかい!
そういう大事なことは(僕には大事なことなので)憶えておいてよ~、とブーたれたのち、自転車で教えられた場所へ向かったら……あった。

店の名前は、

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カラオケ喫茶「しらんけど」。

本当に「しらんけど」という名前の店だった。
ちゃんと教えてくれていたのに、愚痴ってごめん、母ちゃん、堪忍。

「カラオケ喫茶」とは、その名の通りカラオケシステムがある喫茶店のこと。

……なのだが、実際はご年配ののど自慢主婦たちが集う寄りあい処と化す。

たいていがママの自宅を兼ねており、ご近所の奥様方が手作りのお惣菜を持ち寄り、分けあうことが許されている。
いま流行の言葉で云うと、歌える「住み開き」だ

ドアを開けると、六本木や原宿を舞台とした、シティ演歌なるジャンルのサウンドが耳に飛び込んでくる。
店内は喫茶店なはずなのに鍋焼きうどんの香りが漂い、窓辺のちょっとしたスペース随所に、靴下を再使用したウサギの人形など、おばちゃんたちハンドメイドによるファンシー雑貨がぎゅうぎゅうに置かれている。
そういう点では一種の、メイド喫茶とも言える

休日ともなれば「キングレコード専属歌手」を自称する近所のご陽気なおっちゃん(正体はレコード会社の自主制作部門歌手)が歌唱指導にあたり、ミラーボールがまたたくなかでの町内会どうしのチークタイムなどもあり、おばちゃんたちの頬が軽く紅潮したりする。

1枚100円~300円ほどのチケットを歌いたいぶんだけ購入し、カウンターのママに手渡しながら一曲ずつ歌う。
たいていの店には小ぢんまりしたステージセットがあり、そこに立つと店内が見渡せる。
グレードの高い店になると照明を点滅させ、さらにカメラを使って店内のスクリーンに「中継」できる機能まで備えている。
カラオケボックスのように知人の前のみで歌うのではなく、一般客も聴いているのだから、緊張感もある。

若者は「としよりくさい」と敬遠するが、もったいない。
これほど出会いの場として、うってつけのソーシャルな(通信カラオケの)ネットワークはない。
個人専用の「ひとカラ」がブームにありつつあるが、逆に見知らぬどうしが歌を聴きあう「おされカラオケcafé」を造っても流行るんじゃないか?
北欧家具が並んでいて、ソファがあって、女子がともさかりえの「カプチーノ」とか歌う感じの(なんでその歌なんだ)。

吉村智樹事務所http://www3.to/tomokiymail
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by yoshimuratomoki | 2012-10-18 13:26 | 京都府

神戸スナップ 「ムカデ入荷しました!!」

神戸スナップ 「ムカデ入荷しました!!」

JR「神戸」駅から西へ、新開地方面へ向かって歩いていたところ、こんな立て札があった。

イーゼルに載せられた黒板に、

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「超レア ムカデ入荷しました!!」

ムカデはアゴや脚に毒があり、咬まれると気を失うほどの激痛が走るという。
人命にかかわるほどの毒性ではないとされているが、今年の8月12日の朝、愛知県小牧市の東名高速道路で、車内にいたムカデを追い出すためドアを開けた男性が、後ろから来たトラックにはねられて死亡した事故があった。

このようにルックスのインパクトがすでに殺人級に危険であり、それを捕えて売る人がいることも、欲しがる人がいることも、超レアとしか言いようがない。

ちなみに人間の口と肛門をつなげることに血道をあげるマッドを描いた映画『ムカデ人間』はこのたびPART3の制作が発表され、監督は「今度は500人、つなげる」と息巻いている。
「つながる」「絆」の大切さが叫ばれる昨今、これほどタイムリーな映画はないだろう(世相が求める“つながる”とはちとニュアンスが違うかもしれないが)。

「ムカデ入荷」ということは、マニアックな昆虫専門店かペットショップかな?
実際に全長20センチを超える巨大ムカデをペットとして飼う猛者もいるそうだし。

と、思って店を見ると、なんと焼肉屋だった。

まさかムカデを、食う、のか?
まさかまさか食感が生レバーに似てるとか?
もしや「超レア」って、稀少という意味ではなく……超ナマっこと?

訊けばムカデとは、多くはとれない部位である肩バラの、さらにつけ根あたりの極小なお肉のこと。
帯状にひらべったく細いため、そのためムカデと呼ばれているらしい。
そして、この超レアなムカデが提供できることが、いいお肉を扱っている証しと言えるそうだ。

確かに人気店のようで、お店は、客足が多かった。
ムカデだけに。
ムカデだけに。

ムカデだけに。

吉村智樹事務所http://www3.to/tomokiymail
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by yoshimuratomoki | 2012-10-11 11:54 | 兵庫県

失敗写真(京都)

京都スナップその1 失敗写真

叡山電鉄「修学院」駅へと続く商店街を歩いた。

ここは「けいおん!」の舞台としても知られ、学生の道草にピッタリな、のほほんムードのアーケード通り。

商店街にある一軒のリサイクルショップの店頭に、こんなものが売られていた。

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失敗写真」。

失敗写真が1枚50円……。

修学院駅がある「えいでん!」の「えんせん!」には、京都造形芸術大学や京都精華大学など芸大・美大が多い。
著作権フリーでトレースできる写真や、コラージュアートの素材となる写真は、あればあるほど学生は助かるだろう。

とはいえ、1枚50円……。
「成功写真」のプリント代よりも高い。

そういえば、デジタルカメラを使うようになってからこちら、写真撮影で「失敗」することは、ほぼなくなった。
できあがりの美醜はおいておいて、最低限の「対象にピントを合わす」という点で、逃すことはもはやない。
軽いポケットカメラですら、手ブレを瞬時に補正してくれるので、そこそこ小奇麗なものは撮れる。
スポーツ新聞で連載を持ていたときなど「重い一眼レフだと機動力が落ちてシャッターチャンスを逃すから」と、ポケットカメラでの撮影を推奨されたほどだ。

そう考えると、失敗写真の、しかもプリントが手に入る機会なんて滅多にないと言える。
「失敗写真」、意外とレアで、価値があるのだ。

50円くらいの価値は。

吉村智樹事務所http://www3.to/tomokiymail
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by yoshimuratomoki | 2012-10-03 14:52 | 京都府