大阪スナップ 「やっやめて」


僕が日頃から「もっと厳しく取り締まれないものか。なんなら懲役に」とニガニガしく思っているのが、酔っ払いの立小便だ。

取材や会議が終電間際にまで及び、息せき切って駅までダッシュいるさなか、酔っぱらったサラリーマン風のおっさんが道端で立小便する姿を見てしまったら……。
さらに放出される問題の箇所をこの目でリアルスコープしてしまったら……。
この日の努力がすべて水泡に帰してしまうような、ヘナヘナに襲われて立ち直れなくなってしまう。

立小便の話で「水泡に帰して」という表現も、現実感ありすぎて我ながらどうかと思うが

同性の僕ですら、あんなグロスティックからの発射シーンなど見たくないのに、心の準備ができていない女性が唐突に目撃してしまったら、一生トラウマが残るのではないか。

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「やっやめて」

これは大阪福島のとある酒場小路の壁に貼ってあったもの。
警告というより、迫真の悲鳴だ。

下部に描かれた楳図ライクなイラストが、胸をグワシ!! とつかまれる恐怖をいっそう演出している。
知らんおっさんの粗末なまずい棒など、女性にとっては、おろちのごとき忌むべきものでしかないだろう。

言葉から感情の飛沫がほとばしっている、なまなましい名作貼り紙である。

立小便の話で「飛沫が」という表現も、我ながらどうかと思うが

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# by yoshimuratomoki | 2012-12-02 22:10

京都スナップ 「豆腐素敵」



京都に引っ越して驚いたのが、意外なまでの「アジア・エスニック料理店」の多さ

うちから徒歩圏内でも韓国・インド・タイなど、認識している料理店だけで10軒に及ぶ。
いつでも世界各国のグルメに触れられるため、おかげでアジア旅行したい欲がすっかり失せてしまった。

寺町あたりでは見渡す限りエスニックレストランやエキゾチックBARがひしめく路地があり、京都とは、いや日本とは思えない賑々しい光景が広がっている。

あっさりした京料理はあくまで観光客が食べるもの。
地元の方々は夜な夜なアツアツのナンを頬張り、ひーひー言いながら緑色のカレーに随喜の涙を流し、シンハ・ビールで喉を潤すのである。

思考の根底に仏教があることと外国人在住者が多いことが京都をエス二シティ―化させている理由だとされている。
が、もうひとつ、僕は「京都は豆腐がうまいから」ではないかと考える。

豆腐はそもそも中国生まれで、韓国、インドネシア、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、タイなどでも頻用されているワールドワイドな食材。
どんなに辛いスパイスもからしも、唇の感覚が遠のくほどの山椒も、豆腐は受け容れ、抱きしめてくれる。
豆腐はまるで、熱く角の立った料理を「ふーふー」さましてくれる母親だ。
アジア・エスニックの料理の共通語は豆腐という名の母性だと言って大げさではない。
マザー!

やっこや煮物にするのが一般的だが、ステーキのように焼いて食べるのもまた一興。
水質がよく、職人が精魂込めて作る京都の豆腐はきっと、熱い国、寒い国の料理の味わいをさらに底上げしているに違いない。
「鳥羽街道」駅近くで見つけたこの韓国料理店も「トーフステキ」と大絶賛である。

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下書きしてあるのが愛らしいなあ。
「ビビパ」も、あとでピリッとクる。

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# by yoshimuratomoki | 2012-11-28 16:48 | 京都府

大阪スナップ 「唐揚げは飲み物ですよ!!」


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全身全霊傾けて店主に「違いますよ」と告げたくなく貼り紙だ。

かつて故ウガンダ・トラさんは、「カレーライスは飲み物である」と公言し、それが流行語にもなった。
なんとひと皿を3秒で食べきっていた、いな、飲みきっていたという。

カレーライスを3秒で平らげるって、もはやスリラー。
どんだけせわしないんだ。
おそらく並みの人より、忙しさが四倍、だったのだろう。

(ちなみにWikipediaによると、この名言が元となり、命日は『カレー忌』と名づけられ、毎年ご本人と親交のあった芸能人が集まってはカレーやコーラを飲食しながら故人を偲ぶことが恒例となっているという)。

そういえば、ほかに若槻千夏のマネージャーが言った「マーボー豆腐は飲み物です」もあったな。
のちにブログタイトルにも採用された。
麻婆豆腐なら、飲めんこともないか。

そんなウガンダ氏をもってしても、唐揚げを飲むなんてディープ・スロートは至難のワザだろう。

むろん、それだけジューシーなチキンなんですよというもののたとえであることは重々承知。
これ以上はいじらず、ツッコミの言葉をグっと飲み込むことにしよう。

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# by yoshimuratomoki | 2012-11-16 12:49 | 大阪府

京都スナップ 「ゲリラ」


京都に引っ越して、先ずひるんだのが、このスナックの名前。

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スナック『ゲリラ』。

ゲリラと言えば最近は、突発的な大雨や、郷ひろみが渋谷の交差点で突然「熱い、熱い」といった内容の歌を回転しながらうたいだす場合に用いられるが(それ最近か?)、かつては、それはそれは危険な状態を指すものだった。

昭和の時代、パレスチナゲリラ、アフガニスタンゲリラ、旧国鉄の同時多発ゲリラなど、テレビからゲリラに関するニュースがお茶の間に流れるたびに、家族間に緊張感が走り、晩ごはんを食べる箸が止まった。
いまでこそ左派は平和主義で草食系なイメージがあるが、往時は難しいことばを叫びながらコン棒を振り回して火炎瓶を投げてくるインテリゲンチャ暴力団というイメージが強かった。
コーラの瓶に爆竹を入れて、空き地でゲリラごっこをしたこともあった。
(たかだかなんの思想もない子供がやるナンセンス!な遊びなので、どうかご勘弁いただきたい)。

さて、物騒な名前のこの店、訊けば40年以上の歴史があり、熱を帯びた学生たちが討論する場だったとか。
やっぱり!

オープンしたころのマスターはすでに故人だとのことで推測でしかない、40年前の歴史ということは、ここで言うゲリラとは反戦・反安保を謳うフォークゲリラから名付けたものではないかと思われる。
新宿と梅田で蜂起し、機動隊と衝突するほどの社会現象となったフォークゲリラだが、学生フォークが盛んだった京都も当然その流れにあっただろう。

祇園祭が始まったのが869年なんていう途方もない永久の歴史をたたえる京都。
ゆえに昭和の時代など数時間前のレベルなんだろうが、僕には寺社仏閣の歴史をひもとくより、こういった店名に刻まれた昭和の傷痕を見つける方が楽しかったりする。

なんて昭和のレジスタンスフォーク礼賛みたいなこと言いながら、だったら「自衛隊に入ろう」などを聴けばよいものを、なんとなく坂井真紀の『ゲリラ~Get it up~』なんて聴いてしまうわたしを断罪せよ。
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# by yoshimuratomoki | 2012-10-25 16:47

神戸スナップ 「ブ」

鈴蘭台の駅前を歩いていたら、シンプルなネーミングの店があった。

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「たこ焼 たい焼 ブ」。

ただ、「ブ」のみ

ブ……だけ。
「マジカル頭脳パワー!!」の「超瞬間一文字シャウト」かこれは。

情報量がなさすぎてどの角度からもいじりようがなく、荒野にひとり取り残された気分だ。

謂われを訊こうにも定休日。
インターネットを漁っても謎すぎる店名の由来が書かれた記述は見つからなかった。
まるで看板から勝負を挑まれ、いともたやすく不甲斐なく敗れた、そんな心もちに。

とはいえ、実は街歩きの醍醐味はこういった、自分の処理能力をはるかに超えた、でっかいクジラみたいな物件と出会った瞬間にこそある。

一枚も二枚も上手で、歯が立たない、「ブ」だけの店。
あまりのブ頼なブ骨さにブ辱された気持ちになってブ粋にもブ然としつつも、ひとりのブ男の言語感覚を鍛えてくれたこの店に感謝し、ブ運長久とブ事を祈るばかり。

http://www3.to/tomokiymail (吉村智樹事務所)
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# by yoshimuratomoki | 2012-10-19 07:16 | 兵庫県