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ナウ・ロマンティック

 死語、というものがある。一時期に隆盛を極め、時代とともに役目を終えた言葉のことだ。

アムラー」「ヤマンバ」「クリスタル族」「ルンルン気分」「おやじギャル」「キャピキャピ」「シラケ世代」「チョベリバ」「マル金、マルビ」「カウチポテト」「ヤンエグ」「だっちゅーの」「DAYONE~」「パープリン」、……だんだん書いててゲロゲロ~になってきたのでこのへんでやめるが、流行語は時代とジャストフィットするあまり、その寿命は残酷なまでに短いのである(なかには『胸キュン』のように流行語から日常語に定着するもの、『フィーバー』のように言葉の意味を変えて生き残るものもあるが)。

 そして、死語の最たるものが「ナウい」だろう。

 これは70年代末に一世を風靡した、文字通り「新しい」を意味する形容詞だ。僕ら30代はかつて「ナウいヤング」と呼ばれた世代なので、「ナウい」と聞くだけで赤面して裸足で逃げ出したくなるほどいたたまれない。だからこういう看板を見ると、思わずその場からドロンしたくなるんどえーす! あたいは(←ほとんどビョーキ)。

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 これは都電荒川線『西ケ原四丁目』駅付近で見つけたもの。お隣はレトロタウン巣鴨。なるほど、ここだけ時代が凍結しているのかもしれない。

「ナウい」という言葉が流行したのは、それまで「ナウなヤングのハートをキャッチ」するピタッとくる言葉がなかったのも由因のひとつだろう。「イカス」「シビレル」「キマッテル!」なんてのもあることはあったが、これらは決して「新しい」という意味ではない。「ナウい」は、まさに今を表す待望の言葉だったのだ。

 もはや使われることのない「ナウい」だが、言い方を変えて、ナウも、いや今も新しさを指す言葉を生もうとする潮流は続いている。

ナウい」→「イマい」→「翔んでる」→「トレンディ」→「イケてる」→「キテる」→「ヤバイ」。そういえば翔んでるとトレンディの間に「これってINだよね」なんてプチ流行語もあったな。

 さて、「ナウい」は時を経るとともに「ヤバイ」に姿を変えたわけだが、その後に続く言葉がない。「新すぃ」なんてのもあるにはあるが、実際に使ってる人はいない。これは由々しき事態だ。なぜなら流行語は好景気とリンクしているからである。若者が生活をエンジョイ(死語?)できる背景があったからこそ「ナウい」なる言葉が生まれたのだ。新しいを意味する流行語が生まれないということは、すなわち不景気を意味するのである。

 そこで僕は考えた。流行とは、現在ジャストな状態のこと。これを口語化して「ジャスってる」を提唱する次第(はやらん、はやらん)。

by yoshimuratomoki | 2004-09-19 11:54