イーチ・アザーズ・スロート

 これは小田急小田原線『代々木八幡』駅前で見つけたお店。

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 中華料理『他人』……。そりゃ確かに身内しか来ない店はなりたたないだろうけど……。

 いったいなぜこんな他人行儀な店名になったのか、店のおばちゃんにその理由を訊いてみた。すると、予想外にイイ答が返ってきた

「昔から『かわいい子には旅をさせよ』という諺があるでしょう。家を出て、他人の作ったごはんを食べる、それが人間形成に大事なことなのよ

 そんな高尚な意味があったとは! 思えば東京は、おれも含めて「家を出た人たち」の街だ。東京に実家があって、そこに住んでいて、母親が作った料理を食べて暮らしている人は他都市に較べ少ないだろう。旅の途中の人たちが集まって、他人のごはんを食べて日々を過ごしている。そのまま東京にとどまる人もいれば、この街を止まり木にして、他人のごはんを食べてひと息ついて、また別の街へ渡ってゆく人もいるだろう。

 よく「東京は冷たい街だ」「東京砂漠」などという。でもおれは大阪から出てきて8年、東京は厳しいけど温かい街だと思う。そりゃ、確かにべたべたした、ぬるい人間関係はないですよ。みなライバルですから。でも人情って、他人の胸のうちに土足であがり込むことじゃないでしょう。他人と心地よい距離を保つ気遣いのことなんだ、きっと。東京に来て驚いたことは、きれいな女性が本当に多いということ。あれはみんな修業してるからなんだと思う。他人に対して気ぃ張って緊張してるから、きれいなんだ。

 てなことを柄にもなく真面目に考えたり考えなかったりしていたら、頼んだチャーハンが目の前に置かれた。ほれぼれするほど大盛りで、美しい半円を形成した、これぞ正しいチャーハン。レンゲで半円を割ると、香ばしい湯気がもわんとたちこめた。あつあつで、味も薄からず辛からず、見事に他人を思い遣った味。これで600円は安いよ。マイ・チャーハン・オブ・ザ・イヤーに認定。おれも他人に対して、このチャーハンのような人間になりたい。自分で書いてて、意味がよくわからないが吉村智樹)。
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by yoshimuratomoki | 2005-02-18 06:50