カマトット

 僕が中学3年生~高校一年生のとき、男子はほぼ全員といってよいほど松田聖子のファンだった。SEIKOと書かれた親衛隊のハッピを来て学校に来てたやつもいた。それを見て思わず「お前はビッキーズか!」とツッコんだものだ(ウソ。その頃ビッキーズまだいなかった)。

 しかし、うってかわって女子からの評判は最悪だった。「かわいこぶりっこしやがって!」「カマトトぶってんちゃうで」「ウソ泣きすんな」と。これは大阪のいち学校のみの現象ではなく、全国規模の猛バッシュだったと思う。なんせ松田聖子をきっかけに「ブリッコ」という言葉が流行語になったくらいだから。彼女は往時、日本中の女子から憎悪されていた。春やすこ・けいこを筆頭に。

 僕にはそれが不思議でならなかった。ぶりっこ、カマトトという点では、同期のアイドル河合奈保子のほうが、ずっとずっと凄かったはず。なんせ、なにを訊かれても首を傾げていたのだから。鳩か。しかし河合奈保子が特に女子から忌み嫌われることはなかった。とにかく標的は松田聖子だけだったのだ。女子たちは、男子とは比べ物にならない鋭敏な嗅覚で、養殖と天然のブリを見極めていたのだろう。この時期の松田聖子は、常に針のむしろを歩き続ける「裸足の季節」だったといえよう。

 しかし、揺れ戻しというのは凄いもの。いくら同性からのバッシングの嵐が吹き荒れようと、カミソリがトラック満載で送られようと、アイドル(偶像)としての自分を貫く姿勢に、女子たちの批判はしだいに賞賛に変わっていった。いまだにコンサートは女性客でいっぱい。こんなにも永きに渡りアイドルで居続けられた人が、ほかにいるだろうか。なんせ実の娘よりもアイドルなのだから。

 現在、アイドルと呼べるのはグラビアアイドルばかり。一線のアイドル歌手は、数えるほどしかいない。多くが秋葉原の石丸電気辺りを活動の場とする地下アイドルだ。ハロプロ勢がテレビから(ほぼ)消え、プロのサッカー選手になった時点で「アイドル歌手」はいなくなった。「一週間、漫画喫茶で暮らしてた」とか“本音アイドル”も面白いけど、「ブリッコ」「カマトト」こそが基本である。そして、その基本を貫くのが困難な難しい時代だ。

 ……てな、くそどーでもいい話を、夜を徹してしてみたいもんだ。ブランデーでもなめながら。例えば、こんな店で。

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 『ラウンジ カマトト

 これは心斎橋で見つけたラウンジ。「カマトト」とは、幼い子供が、知ってるくせに「カマボコはトト(魚)でできてるの?」と親に訊き、子供らしさをアピールするさまから生まれた言葉。本来は愛らしさを表す言葉であり、蔑するニュアンスはなかった。

 現在では、なかなか通用しない感覚だ。いまカマトトぶろうと思ったら、「宇宙から来たからわかんない~」と前置きせねばならない(吉村智樹)。
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by yoshimuratomoki | 2006-02-01 17:34