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哀しくてジェラシー


恋愛をより甘く熟成させるためには、時にはピリッと隠し味を効かせることも必要だ。
特に「ジェラシー」という名の調味料は、わずかな量で、恋を燃えるように赤く実らせる効果がある。

しかし、適量を見誤れば、取り返しのつかないことになるのでご注意。

自分が嫉妬深い人間であることを自覚したのは、およそ10年前。
遠距離恋愛していた彼女をフリーのカメラマンに寝取られたときだった。
しかも「君のヌードが撮りたい」が殺し文句だったというから、耐えられない。
ちくちょう! 撮るなら俺のヌードを撮れよ!(なんで?)。

激ギレした僕はまさに「嫉妬に狂った」盲獣と化し、まともな思考ができなくなり、知り合いのカメラマン全員との関係を断ち切った。
浮気相手だけではなく、カメラマンという職業に就くすべての人間が許せなくなったのだ。

もちろん言いがかり以外のなにものでもない。
八つ当たりされた人たちは、たまったもんじゃなかっただろう。

でもあのときは、とても冷静ではいられなかった。
「JEALOUSYを眠らせて!」と叫んでも、もう止まらない。
とばっちりを喰らったカメラマン全員にお詫びするしかない。

話はちと変わるが、神戸電鉄有馬線「山の街」という、のほほんとした名前の駅がある。

▼鄙びた街の、旅情を感じさせる駅舎。

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そして、この駅の徒歩エリア内に、「やきもち地蔵」と呼ばれる地蔵菩薩が祀られている。

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▼交差点の名前も、ちゃんと「やきもち地蔵」前。

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さて、このお地蔵さん、「笠地蔵の野郎! あいつだけメジャーになりやがって! 人数多いからってEXILE気取りかよ!」と、やけに嫉妬深いのである。

……というのは、あたりまえだが、もち、ウソ。

お正月に、ある土工の家の夢枕にお地蔵さんが立ち、「土砂崩れでゆるんだ土橋を修理してください」と懇願した。
土工はお地蔵さんの突然の来訪に驚き、とりあえず正月なので餅を焼いてさしだした。
するとお地蔵さんはたいそう喜び、その餅を美味しそうに食べた。

翌朝、土工が橋の修理に出かけたところ、お地蔵さんが石積みの下敷きになって埋もれていたという。
昨夜枕元にやってきたお地蔵さんは、救助を求めにきた中の人だったのだ(中の人っていう表現が適切かどうか知らんけど)。

そしてそのお地蔵さんを救出して安置すると、再びたいそう喜び、ひとつだけ願いを叶えてくれたのだそう。
「ひとつだけ」ってところが、お地蔵さんの身の丈にあっていて、かわいい。
さらに気前のいいことに、それ以来、焼き餅をお供えすると、願いを(最低ひとつ)叶えてくれるようになったのだという。

単に焼いた餅が好きだから、やきもち地蔵。
なんてピュアなんだ!

そんな裏表のない性格のお地蔵さんに、腹黒い僕はまたまた嫉妬してしまうのである。

▼「だってお餅、好きなんだも~ん」と言いたげな、あどけないほほえみ。

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by yoshimuratomoki | 2010-02-07 20:46